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川島永嗣 【W杯戦士 -PICKUP PLAYER-】 [Player]

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先発・川島

 イングランド戦、ゴールマウス前に陣取ったのは押しも押されぬレギュラーGKの楢崎ではなく、川島永嗣だった。

 試合開始前、出先からスタメンをチェックしようと携帯サイトにアクセスした。報道通り阿部勇樹をアンカーに置いた4-1-4-1のフォーメーション。右サイドバックには今野が入った。岡田監督の肝入りで代表入りし、日本のサイド攻撃の軸とも言われた内田は出番が無い。このまま本番でも出番無しはあり得るなぁ、などと考えつつ帰宅しテレビのスイッチを入れた。そこに映っていたのは、等々力の守護神、川島永嗣だった。

 そう、携帯サイトでスタメンをチェックしたとき、GKに目が行ってなかったのだ。目がいかずとも、そこにはいつもの通り「楢崎」の名があると思い込んでいたようだ。それくらい川島の先発は僕にとって意外なものだった。(記憶では事前の報道でもGKの先発を変えるという記事はなかったはずだ)

 川島がW杯の代表に選ばれたと発表されたとき、もちろん嬉しくはあったが、一方で出番無く帰ってくるのだろうなという勝手な思い込みがあった。南アフリカでワールドカップの雰囲気を肌で感じ、4年後に向けて経験値を積むことが今回の川島のミッションである、と。

 沈滞した雰囲気を変えたい岡田監督の大博打だったのか。それとも4年後を見据えた育成策の一つだったのだろうか(そういえばキャプテンも川島と同世代の長谷部に代わっていた)。楢崎・中澤から川島・長谷部の時代へ。そんなふうに舵を切ったようにも思いつつ、キックオフを迎えた。

 試合での活躍ぶりについてはご存知の通りである。優勝候補のイングランドを相手に、好セーブの連発。川崎でも滅多に止めたことの無いPKまで止めるオマケ付きであった。あの場所で愚かなハンドをおかした本田は川島に足を向けては寝られないだろう(もっとも、彼はそういうタマでも無いのだが)。ともあれ、イングランドのメンバーに決して小さくないインパクトを与えたのは間違いないだろう。「日本のGKはなかなかやる」、と。



03年ワールドユース

 川島がイングランドと戦ったのは、実はこれが初めてではない。ただし、フル代表ではなく、ユース時代だが。そして、僕が川島というゴールキーパーの名前を知ったのは、その過去のイングランドとの戦いのときだった。

 03年ワールドユースUAE大会(現U20ワールドカップ)。U20日本代表のレギュラーGKだったのが、当時J2の大宮アルディージャに所属していた川島だった。その大会のグループリーグ初戦で、川島はイングランドと対戦している。

 僕の記憶が全く曖昧なのだが、この大会でのどこかの試合で、川島がスーパーセーブを連発した。(おそらくイングランド戦かグループリーグ最終戦のエジプト戦だったと思う。スポーツナビの総括記事を参照)深夜のTVを見ながら「これは凄いゴールキーパーが出てきたぞ。神がかり的なセーブだ。これで川口・楢崎の次の世代のキーパーは彼に決まりだな」と強く思ったことを憶えている。

 ところが、この活躍を足がかりにしステップアップを望んで選んだ移籍先のクラブは、なんと当時から押しもおされぬ日本代表楢崎が所属する、名古屋グランパスエイトだった。当時楢崎28歳。経験値が重要視されるGKというポジションで向こう何年もレギュラーがほぼ約束されている楢崎に戦いを挑んでいったのだった。当時の僕は「もったいない・・・楢崎、あとは川口や曽ヶ端クラスがいないクラブを選べば、即スタメンなのに・・・」と思ったものだった。

 そこから3年間、楢崎が怪我をしていた時期以外はベンチを温めていたようだ。僕は熱心に名古屋の試合を追っかけていたわけではないので、よく憶えていない。



代表GK獲得

 そして迎えた2006年オフ。J1再昇格2年目で2位に躍進した川崎フロンターレが補強の目玉として狙いを定めたのは川島だった。

 その年の川崎は攻撃陣はタレント揃い、サイドにも個性的な選手が陣取り、ボランチは成長著しい憲剛&谷口、やや不安定ながらも「川崎山脈」と呼ばれる大型のディフェンダー陣を構え、フィールドプレイヤーは昇格したばかりとは思えないなかなか充実した布陣だった。唯一の泣き所がGKだったのだ。190センチを誇る相澤とJ1昇格を支えた吉原。サポーターとしてはもちろん愛着はあるのだが、大事な試合でミスやポカが多い。あの雨のFC東京戦、審判の判定にも泣いたが、5失点のうち2失点はGK吉原の単純なミスだった。(サッカー誌には「GKは優勝争いをするレベルではない」と酷評された)

 そんな中、名古屋で楢崎の控えに甘んじている川島に目を付けたのは当然だった。あくまでも推定の話ではあるが、その年のリーグ順位2位の賞金1億円を移籍金につぎ込んで獲得したとのこと。強くなれば、更に補強が出来る。サッカークラブの経営の原点を見た気がした。

 そして何より驚かされたのが、07年のシーズン前の代表合宿に召集されたのだ。もちろん川島自身初のフル代表選出である。当時の代表監督はオシム監督。いくら川崎でのポジションがほぼ約束されていたとはいえ、それまでクラブで控えだったGKを召集するのは異例中の異例だった。おそらく、オシムは名古屋での数少ない出番をめざとく見ていたのだろう。GKに攻撃の起点としての役割を期待するオシム監督にとっては、キック力があり、足技もハイレベルな川島に次世代のGKの軸として白羽の矢を立てたのは、当然の成り行きだったのだろうか。そう、GKが弱点と言われた川崎が獲得したのは、なんと代表GKだったというわけだ。

 そして迎えた2007シーズンの開幕、等々力での鹿島アントラーズ戦である。もちろんGKは川島。その年からリニューアルされた緑のGKユニに身を包んだ勇ましい姿を見て、川崎の新しい時代が始まったことを強烈に感じたものだ。

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 目新しかったのは緑色のユニフォームだけではなかった。川島のゴールキックである。距離が凄い、速さも凄い、フォームも美しい。失礼な話だが、前年までのGKとは比較にならないレベルだった。今ではすっかりお馴染みになった川島のロングキックだが、あの鹿島での開幕戦ではゴールキックのたびにスタンドから「うぉーーーー」という驚きともため息ともとれないような声が聞こえてきたのが印象的であった。

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但し、今と比べるとビックリするくらい細い。



2009年

 そうして川崎の一員になった川島。代表でチームを離れたとき以外は常に川崎のゴールマウスを守ってきた。もちろん入団年度の2007年から安定したプレイを続けてきているが、もっとも充実していたのは2009年だろう。ベストイレブンも受賞したが、とにかく浮き沈みが多い川崎の戦いの中で、色々印象的な場面に遭遇した。

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シーズン初の完封勝ちを目前に後半ロスタイムに1点を失い、この表情(ホーム京都戦)

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スーパーセーブ連発で無失点、テセの起死回生のゴールで1-0で勝利。(アウェイ山形戦)

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遠藤のPK、そしてFKもスーパーセーブ。(ホームガンバ戦)

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楢崎の長期離脱時には代表ゴールマウスも守る。(スコットランド戦)

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米本のブレ球ミドルをセーブできず。悔しい決勝での敗戦。(ナビスコ決勝)

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豪雨の柏戦、勝利したものの、涙。(アウェイ柏戦)

 川崎にとっても今までで一番重みのある1年だったが、そこにはいつも川島の姿があった。もう見慣れてしまったが相変わらず凄いゴールキック、ピッチに響き渡るコーチングの声、数々のスーパーセーブ、鬼の形相でディフェンス陣を叱り付ける姿。・・・なかなか見れないのがPKをセーブする場面であるが・・・。



南アフリカのピッチへ

 そして迎えたワールドカップイヤー。新しい戦術にチャレンジしている川崎はとにかく失点が多い。リーグワースト2だ。が、これは川島のパフォーマンスが低いわけではないと言っていいだろう。川島がGKでなければきっとワースト1になっていた。これは08年のときもそういう声が聞こえていたわけで、どうも高畠監督の攻撃サッカーは川島に相当の負荷が掛かるシステムであることは確かなようだ。

 ともあれ、W杯代表選手には順当に選出。・・・いや、予想されていた西川(広島)に代わり、キャプテン役を任されることになる川口が選ばれた。サッカーファンの間では、楢崎・川口の次の世代のGKは、川島と西川が争うと目されていたのだが、岡田監督が一歩リードしていると判断したのは川島のようだ。

 そう、あくまでもポスト楢崎の一番手、本人は絶対そうは思っていないはずだが、我々川崎サポーターですらそのように考える人が多かったはずだ。ところが、今回のイングランド戦での大抜擢、そして大活躍。岡田監督は一度自分が講じた策が当たると、それに固執するタイプのように思える(一方で試合毎にトライアルをする柔軟性に欠けているともいえる)。本戦前の最終マッチ、6月4日のコートジボワール戦で川島が先発するようなことがあれば、南アフリカのゴールマウス前に立つのは川島と考えて間違いないだろう。

 一方で不安もある。4年前のオーストラリア戦、あの屈辱の敗戦のきっかけとなった1失点目は明らかにGK川口のミスだった。積極的な守備の裏返しではあったが、あの失点さえなければ・・・という思いを抱くサッカーファンは多いはず。あのことで川口は相当色々な方面から何かと言われたはずだ。・・・もし南アフリカで川島が大きなミスでもしでかしたら・・・川崎サポとしてそんな心配を抱く者もいるはずだ。自分のゴールマウス前というポジション、一つのミスが命取りとなるのがゴールキーパーというポジションなのだ。

 だが、本人はそんなミスなど恐れはしないだろう。03年オフ、敢えて楢崎という大きな壁がある名古屋を選んだ男である。カメルーン・デンマーク、そしてオランダ。相手にとって不足は無い。

 「高ければ高い壁のほうが登ったとき気持ちいいもんだ」                   Mr.Children「終わりなき旅」

我々も遠く日本から川島が南アフリカのピッチに立つことを祈ろうではないか。そして、いつも等々力で聞いているあの叫び声を、遠く空の彼方に耳をすましてみよう。


エイジ、エイジ、エイジー カワシマエイジ
エイジ、エイジ、エイジー 俺達のエイジ
カ・ワ・シ・マ・エイジ! カ・ワ・シ・マ・エイジ!

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川島永嗣(かわしまえいじ) 1983年3月20日生まれ 埼玉県出身
185センチ 80キロ O型 ポジション:GK






===
とまぁ、オフィシャルのピックアッププレイヤー風(あくまでも”風”です)でまとめてみました。
残り3選手・・・さぁ本番までに間に合うか?(笑)
nice!(1)  コメント(3) 

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コメント 3

たつパパ

見に来ました。写真も文も決まってるじゃないですか!!
そのデザインセンスちょっと分けて欲しいです(笑)。

川島様は確実に世間の評価を上げましたね。
移籍当時が細かった、というのは写真を比べると初めて分かるんですね。
by たつパパ (2010-06-01 12:32) 

よっこ。

熱い記事ですね!!

川島を知らない方に教えてあげないと♪
by よっこ。 (2010-06-01 20:37) 

Mac_BLUEMAGAZINE

>たつパパさん
ありがとうございます。
今晩見栄えその他をマイナーチェンジしました(笑)
文章をウリにするのはおこがましいのですが、
まぁ季節モンってことでご容赦ください・・・
07年のときの線の細さは僕も今回初めて気付きました。
08年はそうでもないんですけどねぇ。

>よっこ。さん
川島入門としてはそこそこですかね。
ま、僕的な川島回顧録ですから色々抜けてますが・・・
(イタリアの留学経験とか)。
そんなわけで第三弾に予定しているイナはかなり苦労しそうです・・・。
by Mac_BLUEMAGAZINE (2010-06-02 01:58) 

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